
45歳女性。体格は比較的しっかりしており、日常生活では大きな問題はなかったが、交通事故をきっかけに脊椎の痛みが出現した。 画像検査の結果、胸椎周辺の複数箇所に骨性変化が確認され、左右両側に分離を認める状態であった。 事故後はコルセットによる固定など保存的治療を行ったが、一定期間経過後も痛みが残存した。 CTなどの画像検査では、分離した部分の骨癒合が十分に得られていない状態であった。しかし、椎体の大きなずれや不安定性、神経症状は認められず、積極的な手術適応とはならなかった。 このような場合、治療の目的は「分離した骨を元に戻すこと」ではなく、周囲組織の回復、疼痛軽減、身体機能の改善を図ることになる。 本症例では、慢性的に残存した痛みに対して、身体を温める施術や体の循環改善を目的としたケアを行った。また、必要に応じて漢方専門医による体質に合わせた内服治療も併用した。 東洋医学では、外傷後に残る慢性的な痛みを「瘀血(血の巡りの停滞)」という考え方で捉えることがある。 外傷によって局所の循環が低下すると血流低下 ↓ 組織の回復力低下 ↓ 筋肉や周囲組織の緊張 ↓ 慢性的な痛みの持続 につながると考える。 本症例では、身体を温め、循環改善を図ることで徐々に痛みが軽減し、約3か月の経過で日常生活に支障となる痛みは改善した。 この症例から重要なことは、画像上で骨の分離が残っていても、必ずしも痛みが永続するわけではないという点である。 脊椎の分離症では、 ・骨の状態 ・椎体の安定性 ・神経症状の有無 ・周囲筋肉や軟部組織の状態 ・身体全体の回復力 を総合的に判断する必要がある。 一方で、神経への圧迫、進行するすべり、不安定性がある場合には、医療機関での継続的な評価が必要となる。 保存的治療においては、骨そのものだけを見るのではなく、身体が本来持つ回復力を高め、痛みを管理しながら機能を回復させるという視点が重要である。 図は温熱と血行促進